オルヴァル修道院訪問

先々週末、ベルギー最古のトラピストビール、オルヴァルを飲みに行ってきました。ブリュッセルからは車で2時間、オルヴァルはベルギー南部のアルデンヌと呼ばれる広い森の中にあります(フランスとルクセンブルクの国境の近く)。

例によって、かなりの田舎道をドライブするので、こんなとこに本当にあるんだろうか…と、途中で不安になってしまいます。「Orval」の標識を頼りに進んでいくと、とても小さいオルヴァルの村に到着し、修道院の看板を発見。修道院の醸造所は1年に1度の公開醸造所のイベントの時にしか入れないので、近くの樽出しのオルヴァルを出すカフェに行ってみました。ちなみに近くにカフェは2つあって、そのうち一つしか樽出しは提供してないので注意です(「À L’ange Gardien」というカフェです!)。

こっちが樽出しオルヴァルが飲めるカフェ「À L’ange Gardien」
<もう1つのカフェ。こちらでは飲めません!>


大抵どの修道院もメーカーも何種類かビールを造っているのですが、オルヴァルは珍しく1種類しか造っていません。とても高い評価を受けているにも関わらず、です。潔いですね。


でもこのオルヴァルのビール、時と共に味が変わるというとても面白いビールなんです。なので1種類と言えども年代別に飲むと色んな味が楽しめてお得ですね。今回は樽出し1つと、1年物のオルヴァルを1つ注文しました。樽出しの方は、IPA(Indian Peal Ale)のような味がしました。若くフレッシュで、グレープフルーツのような味と香りがします。スッキリとした飲み口。発泡はあまりなく、グラスの底から見えるも泡のダンスもありませんでした。1年物の方は、同じビールでもこんなにも味が違うものかとまず驚きがきます。泡立ちがよくグラスの中で泡のダンスが見られます。瓶内発酵が進んだからでしょうか。若いフレッシュさはないのですが、角がとれてマイルドな味わいになっています。また、樽出しと同様にグレープフルーツのような味わいと香りがしますが、かなり薄くなっており、かわりにほのかな甘みとエステル香がします。年代の違う同じビールを味わうというのは始めての経験でした。ベルギービールはほんとに奥が深い。。


ちなみにオルヴァルビールは、現存するトラピストビールの中でも極めてユニークで、トラピストの最高峰と言われています。2種類の酵母菌を3回に分けて投入したり、英国流のドライ・ホッピング(二次発酵中のビールに大量の乾燥ホップを投入)という手法を用いたりすることによって、複雑な香りと味わいを出しています。

<コースターはオルヴァルのシンボルである鱒の絵が>
<丸いフォルムが個性的な瓶と聖杯形のグラス。生まれた当時からほぼそのままの姿です>

食事は修道院で造られたチーズと、そのチーズを使ったグラタンを注文。どちらも非常に美味しかったし、よくビールにあっていました。

<オルヴァルチーズを使ったグラタン>
<チーズ>


<ビールメニュー。フランス語、オランダ語、英語表記です。赤字で「Ange Garden限定!」と書いてあるのが樽生です。瓶詰めのものも、1年熟成したものと出来たてのものが2種類あります。>


食事の後はカフェからちょっと歩いて修道院併設のミュージアムへ。

1人6ユーロでかつての修道院跡や貴重な資料や展示物を見れたり、オルヴァル修道院の歴史、ビールやチーズの造り方が学べたりします。これで6ユーロはお得でした。受付で日本語の簡単なパンフレットももらえます。


オルヴァル修道院はフランス革命の時に破壊された18世紀の修道院をそのまま再現しています。色んなビールを飲むときに、そのビールの歴史を調べるようにしているのですが、かなりの数の修道院がフランス革命で破壊されているんです。革命軍の兵士達によって略奪にあってしまうんですね。敷地内には革命時に破壊されてしまった12~13世紀にかけて建てられた最初の修道院の廃墟も残っています。新旧両方を同時に見ることが出来るという造りは珍しく、世界中探してもほとんどないそうです。特に、廃墟の方はベルギー最古のゴシック建築と言われており、歴史的にもとても貴重な文化財です。


<全体像>
<かつての修道院>

上の写真が修道院の全体像で、ここでビール、チーズ、蜂蜜の製造をしています。もちろん本来の意味での修道院(修道士の住居)もあるし、その下の写真の廃墟も中庭の方にあります。とても広い。ミュージアムはフランス語、オランダ語、英語で各所に説明が書いてあります。速足で歩いても1時間はかかるボリューム。中でも面白かったのはビール醸造について学ぶコーナーです。昔使っていた醸造に使う設備が展示してあり、醸造クイズなるものも各所で楽しめます。クイズは全部やりました!


もう一つ、オルヴァルを語る上で欠かせないのが「マテルドの泉」。言い伝えによると、1076年頃、この地方の領主であるイタリアのトスカーナからやってきたマテルド伯爵夫人が、狩りの途中この泉のほとりに腰を下ろした時、ふとしたはずみで亡き夫の結婚指輪を泉の中に落としてしまうのです。夫人は悲しみにくれ、近くの祈祷所で一心にお祈りをささげます。泉に戻ってくると、突然泉から一匹の魚が指輪をくわえて泳ぎ出てきて指輪を返してくれたそうです。夫人は大喜びで「本当にここは金の谷(=VAL D’OR⇒ORVAL)です!」と叫んだとのこと。それがオルヴァルの由来です。

マテルドの泉何の変哲もない小さな池のようなところでしたがたくさんの観光客がいました。オルヴァルのシンボルである鱒の絵がユニークで、初期から変わってないことからこうやって多くの人を惹き付けるんですね。ビールの造り方を見ていても素人の私にもそのこだわりが伝わってきます。まさにトラピストビールの王様ですね!日本でもインターネットで購入可能です。

★オルヴァル修道院住所:Orval 2 6823 Villers-devant-Orval

★À L’ange Gardien(樽出しオルヴァルが飲めるカフェ)

住所:Orval, 6823 Florenville

営業時間月・火・木:11:00~18:00金・土・日:11:00~21:00

※7,8月は毎日11:00~21:00まで営業

URL:http://www.alangegardien.be/default.asp


Atlanta Life ~via Belgium~

2015年~2017年はベルギーで。2017年8月よりアメリカはアトランタで生活を始めました。

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