Goodbye ルーマニア、旅の締めは「国民の館」で

この旅の最終目的地であるルーマニアの首都、ブカレストに戻ってきました。 

初日のブカレストでは旧市街を散策しただけだったので、今回はブカレスト観光の大目玉、「国民の館」に行ってきました。  国民の館とは、ルーマニア最後の独裁者、チャウシェスクが1983年以降、贅の限りを尽くして国民たちに造らせた世界で二番目に大きな館(一番はワシントンのペンタゴン)。地下4階~地上10階建てで、総面積は330, 000㎡、部屋数は3,107にも上るといいます。

<こちらが正面から撮った国民の館。かなり引いて撮ってますが、大きすぎてなかなか写真に収めるのが大変です>

 

国民の館は、ホテルからちょっと距離があったので地下鉄で行ってみたのですが、ブカレストの地下鉄はスリが多いことで相当悪名高いのでハラハラ…。駅構内はかなり閑散としていて(日曜日だからかもしれませんが)、スリがいたらすぐ分かりそうでした。 車内は結構キレイで、驚くことにスリ防止のための監視員が1〜2車両に一人ずつ、電車の連結部分で見張っているのです。スリが多過ぎて地下鉄に乗る人が少ないことへの対策なのか、、でもあまりの監視員の数にびっくりしてしまいました。そして、ルーマニアではほとんどアジア人を見なかったのですが、私たちがよほど珍しいのか、メトロに乗っていると他の乗客の視線をかなり感じました。そういう意味ではベルギーは超人種のサラダボウルなので居心地が良いですね。 


さて国民の館ですが、ここはルーマニアに行ったらぜひ行って、そして内部を見学してほしいところです(予約について下に記しておきます)!

見学はスタンダード+テラスツアーという1.5時間のものにしました。色々とコースがありますが、そんなに違いはなさそうです。ツアーは英語、フランス語、ルーマニア語の3種類で、私たちは英語のツアーに参加。ガイドさんの英語は聞きとりやすく、とても勉強になったツアーでした。1.5時間の間に、この館のハイライト的な部屋を沢山見せてくれるのですが、あまりにも広過ぎるので、ツアーの時間だけでは全体の5%も見ていないそう。

外から見ただけだと、大きいなぁ…という感想だけで終わってしまいそうですが、中に入るとその絢爛豪華さに驚き、同時に、これだけのものを造るのにどれほどの労力を要したのだろうかと気の遠くなるような気持ちになります。

国民の館は1983年に着工され、材料はルーマニア製にこだわり、国中のクリスタル、木材、大理石、綿などを集め、子どもから女性まで動員して造られた大宮殿です。約3000基のシャンデリア、美しい巨大な絨毯、至る所に施された金銀の装飾…。建設に従事した労働者は2万人以上で、3交代で昼夜休みなく建設作業が行われていたそうです。1日の食事は少しのパンだけ、トイレも1日に5分だけ、しかも全員同じ時間に…などと非人道的な働き方を強いられていました。国民が貧困であえいでいる時に、私利私欲を満たすための大宮殿を造らせるなんて、たかだか30年ほど前にあった話だなんて思えません。中世ヨーロッパじゃあるまいし。そんな時代錯誤な大統領は、1989年に起きたルーマニア革命にて失脚、完成を待たずして同年の12月25日に夫妻で処刑されました。

ちなみにこの1989年は東欧史において非常に重要な年で、東ヨーロッパの社会主義国で連続して民主化が起こった年です。ベルリンの壁崩壊、ポーランドとハンガリーで非共産政権の誕生、チェコスロバキアでビロード革命…etc。世界史にものすごく疎い夫が、最近の旅行で1989年の激動に気付き、歴史に目覚めたのか、この時代について熱く語ってくれました。私も勉強しなければとKindleストアを見てみましたが、一番良さそうな「東欧革命」という本は電子書籍化されておらず。。日本から送ってもらおうと思います。


ルーマニア革命により、建設は一時中断となりましたが、この時点でまだ7割ほどしか完了しておらず、取り壊すか完成させるか議論になったそうですが、解体よりも完成させる方が費用がかからないという結論に達し、工事が再開されたそうです。

この国民の館、あまりの大きさに維持管理費が膨大で、現在に至っても国民の税金を食いつぶしているとか。。現在は国会議事堂や各政党のオフィス、パーティ会場、コンサートホール、イベント会場などとして使用されていますが、大部分の部屋が使用されていません。まさに負の遺産ですね。


<大理石がふんだんに使われています>


<金の装飾とシャンデリアの数々>


ツアーの最後はテラスに行くんですが、ここでタバコを吸っていいですよという案内が。ルーマニアは喫煙率がものすごく高いのです。今まで行ったヨーロッパの中で恐らく一番。とにかく老若男女みんな吸っていて、レストランのテラス席なんか、周り中タバコだらけで苦しくなってしまうほど。

ガイドさんがタバコで一服してしまいたくなるほど疲れるツアーなのですが、ルーマニアの近代史を理解するためにぜひ行ってほしい場所です。


<テラスからの一枚。ブカレストは、1977年のルーマニア地震により、街の大部分が崩壊。その後ソ連の元、進められた都市計画により無機質な建物が増えました。>


国民の館でちょっと現代史のお勉強をしたルーマニア最後の目的地、ブカレスト。地方都市を巡って癒されてただけでは分からなかった、ルーマニアのもう一つの側面が見れて非常に有意義な旅行となりました。当初、ルーマニア語とドラキュラの国でしかなかったルーマニアが、今では私の中でとても存在感のある国に。シビウの不思議な目をした家々、ドライブ途中で沢山すれ違った馬車、美味しいルーマニア料理の数々、そして社会主義時代の暗い過去を今もなお引きずる国民の館。

そんな見どころいっぱいのルーマニア、ぜひぜひ沢山の方に訪れてみてほしいです。

ルーマニアに行ったら今度はブルガリアに行ってみたくなってきました。バラとヨーグルトのイメージのブルガリア、一体どんな国なんでしょうか??


<おまけ>

ブカレストの市場にて、Lazyなおじさん。



<予約について>

国民の館には予約なしでも入れましたが、予約したい方はこちらからどうぞ。ただし、Web予約をした後に電話でのリコンファームが必要です。私たちはWebで予約して、電話でリコンファームしようとしたら、サイトが壊れていたのでネット予約が出来ていないと言われ、それでは、と電話で改めて予約しました。ところが当日ちょっと早く着くと、予約なんて関係ないようで、予約していない別のツアーに行くことになりました。結局予約なんてあってないようなものです。ちなみに入場にはパスポートが必要なのでお忘れのないように。また、館内での写真撮影は有料ですが(そんなに高くはなかったかと)、お金を払う価値のある内装です。ただ館内が壮大過ぎて写真に上手く収まりきれないのが残念だったのですが、それほど巨大ということが分かると思います。


Atlanta Life ~via Belgium~

2015年~2017年はベルギーで。2017年8月よりアメリカはアトランタで生活を始めました。

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