カンティヨン醸造所訪問
南駅からは徒歩10分、車で行く場合は近くに路上駐車(有料)することが出来ます。Cantillonというロゴが目印。本当にここが醸造所の入口かな、とちょっと不安になってしまいそうな素っ気ないドアですが、開けると中はとても広く、酵母のにおいが漂っていました。なんとなく日本の醤油工場のような感じがします。
ランビックビールは野生酵母を利用した自然発酵ビールです。昔ながらの伝統的な設備の中で作られるランビックの大敵は虫。なので醸造所の中は蜘蛛の巣がいっぱいでした。酵母を殺虫剤で殺してしまってはいけないので蜘蛛に虫を食べてもらっているのですね。
また醸造所内の木組みをよく見ると白い斑点が。酵母が住み着いているのが分かります。ここでも掃除をあえてせず、酵母と共存している様子が伺えました。掃除をして生態系が変わり、ランビックビールの味が変わってしまっては大変だからです。
醸造所見学はとても興味深く、見学終了後はすっかりランビックのファンになってしまいました。とにかくものすごく手間がかかっています。現代の近代化されたビール製法とは真逆を行く古典的な製法で、現在ランビックが造られているのはベルギーだけなのです。
原材料は小麦、大麦モルト、ホップのみ。
ざっくり工程を説明すると、①大麦と小麦の粉砕、②煮沸、③ホップの添加、④冷却、⑤樽内発酵・熟成、⑥瓶詰め、です。特に印象深かったのは冷却の工程。熱い麦汁を屋根裏部屋に汲み上げ、自然の力で冷まして、野生酵母を根付かせるのです。表面積が大きく薄っぺらい冷却槽で麦汁を最大限に冷気と接触させ、効率的に冷まします。よってランビックビールの仕込みに適しているのはベルギーが涼しくなる10~4月まで。また、暑い夏の時期だとバクテリアなども多く繁殖してしまうのでそういう意味でもこの時期が最適なのです。また熟成の期間にも驚かされました。ストレートランビックの場合は発酵と熟成に3年、瓶詰めしてからさらに3年寝かせるんです。
自由にコースの見学をした後はお待ちかねのテイスティングタイム!
最初に受付でチケットをもらうので、そのチケットを見せてビールをもらうので失くさないように。ビールは2種類試飲することが出来ます。1杯目はストレートランビック。グレープフルーツのような酸味と苦みがあります。酵母が2年半~3年の時間をかけて糖分を食べてしまうので酸っぱくなるのです。
バーコーナーの隣には売店もあり、ビールはもちろんTシャツやトレーナーなどのカンティヨン醸造所のロゴが入ったグッズを購入することができます。こうやって観光客にランビックの醸造所を開放することにより、より多くの人にベルギービール伝統のランビックを知ってもらい、少しでもランビックビールの生き残りに寄与できるのは嬉しいことだなと思いました。
ビール産業の近代化に伴い、非効率で費用がかかるランビックはどんどん世界の大手メーカーのビールに淘汰されていっています。二酸化炭素やシロップを人工的に抽入して作られる、現代版のなんちゃってランビックなるものも登場し、なんとそれは数週間で出来てしまうのです。実は今まで酸っぱくてちょっと苦手だなと思ってたランビックですが、この醸造所に行って、このベルギーの伝統的なランビックがなくなってしまわないように守らねばと、なんだか愛おしくなってしまいました。
このエピソードを知ってしまったからには今後見かけたら飲んでしまいそうです。(ちなみにフルーツランビックは食前酒に最適ですので皆さんもぜひ!)
*日本語のコース説明あり(紙面)
住所:Rue Gheude 56 1070 Bruxelles
営業日:月火木金土10:00~17:00水曜、日曜、祝日は休み
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