愛蘭土(アイルランド)紀行
30年位前に発行されたちょっと古い本ですが、単なる紀行文ではなく、歴史や文学、民俗学について、そして司馬遼太郎さんの考察が書かれているので古さは感じませんし、かなり勉強になります。観光地に行っても背景を知らないと素通りしてしまいそうになりますが、いろんなウンチクを知っていると100倍楽しめる気がします。
基本的には彼の旅行記なのですが、とても著名な人なので、彼のガイド役としてその土地に性通した人たちが登場します。そしてそのガイド役の方から聞いたことと、彼が現地で見たこと、感じたことを纏めてあるのでとても読み応えのある内容になっています。途中でかなり話の寄り道があるのでなかなか旅は進みませんが、それがまた楽しい。
特に私が気に入った部分はアイルランドの成り立ちについて。
恥ずかしながらちょっと最近までアイルランドはイギリスの一部、または似たような国だと思っていました。「グレートブリテン及び北アイルランド連合」というイギリスの正式名称から勘違いが生まれていたのかも。でも民族も違えば、歴史的にずっとイギリスから搾取されイギリスと戦って来た国だったんです。反英感情が強いのでイギリスと一緒にされたら怒られてしまいますね。本当に恥ずかしく申し訳ない無知でした。
元々アイルランドには土着の民族が住んでいましたが、その民族については詳しいことは分かっていません。
その後ケルト人がヨーロッパからやってきます。ケルト人はシーザーカエサルの「ガリア戦記」で登場する民族。一時は私が住んでいるベルギーのあたりから(あの辺が「ガリア」です)、フランス、スペイン、イギリス、そしてアイルランドにまで勢力を広げます。
ただ、ケルト人は小グループで活動する民族だったので団体戦略が得意なローマにどんどんやっつけられてしまいました。でもそのローマもアイルランドまでは行きませんでした。アイルランドのことを「シーザー(カエサル)も来なかった島」とアイルランド人は言うそうです。
その後アイルランドにはヴァイキングがやってきますが彼らはすっかりケルト人に同化してしまいます。
ということでアイルランドはローマ化も免れ、ヴァイキングの略奪も逸らし、ケルトとして今に至るのです。
多くの場合、ケルト人はローマ人から追いやられたり、混血していきますが(例えばフランスの原型はゲルマン人の大移動の前まではケルト人とローマ人の混血)、例外的にケルトの文化を保っている地域がアイルランドの他にもあるそうです。それがスコットランド、フランスのブルターニュ半島、スペインの北西部などです。
また、上記の地域だけでなく、世界中にアイリッシュのコミュニティがあります。以前別の記事で書きましたがアイルランド内の人口の10倍以上のアイルランド人がアメリカを始めとする世界中の国にいるそうです。
こうも頑なに自分たちのアイデンティティを守り、継承していくというのはとても特殊な民族のように思います。なんだかミステリアスでとても惹かれますね。
この本のおかげで一気にアイルランドに対する興味が沸きました。
司馬遼太郎さんもいろんな国を旅されてると思いますが、アイルランドについての本を2冊も書いたのはきっとこの不思議な魅力を持った国にとりつかれてしまったからなんでしょうね。
他にも沢山書きたいことはありますが、本の内容をそのまま話してしまいそうなので、後はぜひこの本を読んでみてください。
0コメント