川の向こう側とこっち側
先日、図らずともモーレンベーク(Molenbeek)に行ってきました。テロの後だいぶ報道されていたのでこの地名を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?「テロリストの巣窟」や「テロリストの温床」などと言われ、すっかり悪名高い場所になってしまったところです。
モーレンベークはブリュッセルの西側に位置し(↓の地図の赤線で囲まれたところ)、人口は約9万人、人口密度はブリュッセルで最も高く、人口の8~9割がモロッコなどの北アフリカ系または中東の人。失業率は3~4割にも上ります。街にはモスクもあり、アラビア語で書かれた看板がかかるお店もちらほら。
ベルギーの最も有名な観光地「グランプラス」の最寄り駅であるDe Broukere駅の、2つ先のComte de Flandre駅で降りたらそこはもうモーレンベークです。この日は、この近くでランチをする予定だったので、何も考えずに最寄り駅だったComte de Flandre駅で降りたら、なんとそこはイスラム圏。
ちょうどマルシェが立つ日だったようで、沢山の八百屋、果物屋、日常品を売るスタンドが立ち、威勢の良い掛け声がフランス語や何語か分からない言葉で飛び交っていました(多分モロッコのあたりの言葉)。
行き交う女性たちは皆ベールを被り、ベールをしていない自分がとても異質な存在に思えたほど。
私は相当な方向音痴かつ地図が読めないので、まさか自分がモーレンベークにいるとは思いもせず、とても呑気にマルシェを探索してしまいました。活気のあるマルシェはとっても楽しいなぁ、ここはイスラムの人が多いなぁと。
<市場での一場面>
さて、そろそろ待ち合わせのレストランに行こうと地図を開いて、初めて自分がモーレンベークにいることに気付きました。実際全く危険は感じなかったけど、行ってはいけないと言われている場所に入っていたので慌てて出てきたのですが、先入観ってとても怖いな、と思いました。
というのも、先日この辺りで友人とご飯を食べていて、さぁ帰ろうとなったとき、モーレンベークのComte de Flandre駅が最寄りだったので、かなり恐る恐る、ビクビクしながら駅に向かったという経験があったんです。その時はこの徒歩3,4分が結構怖くて(テロの後だったこともあり)、早く駅に入って電車に乗らなければと焦っていた記憶があります。あの時はイスラム系の人達がとても怖く見えてしまった。
この辺りで、如何に私が方向音痴で自分の位置を把握していないかが分かってもらえたと思うのですが(笑)、知っていてモーレンベークに入ったあの日と、知らずに入った今回で全く印象が違ったのがとても驚きでした。
モーレンベークの私がいた場所から待ち合わせのレストランには、川を一本越えるだけ。この川を渡ると、いつもの私が知っているブリュッセルの光景に戻ります。その距離はほんとに数百メートル足らず。「川の向こうに行っちゃいけないよ」と言われていたのがこの川(写真下)。どう表現していいか分からないのだけど、なんだかとても複雑な気持ちになりました。ブリュッセルは国際都市でみんなが共存しているように見えるけど、こういうところに行くと決して交わらない何か、があるんだなと思いました。
<こっち側からあっち側を撮った写真。橋を越えたらモーレンベークです>
人間、同じ人種で固まって住んだら楽ちんです。だから世界中にチャイナタウンや日本人村がある訳で。自分の母国語や常識がそのまま通じるのはほんとに便利です。
だから、固まってコミュニティを作るのは理解出来るんですが、なんだかこうも濃厚で巨大なイスラムの街を見て、住んでいる人のほとんどは善良な市民のはずなのに、その集団が「危険」という烙印を押されているのは、悲しい気持ちになってしまいます。差別なんかなく、いろんな民族が混ざり合って、心地よく生きるのは結構難しいことなんだなぁと、思いにふけってしまいました。
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