マシモンに会いに…

毎日先生と色んなことを話していると、グアテマラの知らなかった一面をどんどん発見します。そんな中、とりわけ私の興味を引いたのが、サン・シモン(マシモン)というグアテマラ人が信仰する神様。スペイン語ではサンシモン、マヤの人達はマシモンとも呼びます。

このマシモンがものすごく独特でして。スペイン人のような顔をしていて、背広を着て、帽子を被ってタバコを吸っています。このマシモンという神様は元々マヤの人たちの信仰の中心だったそうなのですが、スペイン人が16世紀にやってきたとき、彼らに禁止されないようにスペイン人風に姿を変えたのだそう。結局スペイン人からはその「聖人」は洗礼してないとして認められなかったそうですなのですが、マヤの人たちのしたたかな信仰心や、当時のスペイン人がいかに圧政を強いていたのかがこのエピソードからうかがい知れます。マシモンに関する起源など詳しいことはよく分かっていないそうなのですが、お酒とタバコと女性とお金が大好きな神様ということで、近くには沢山のお供えものが置いてあります。

<マシモンの人形>


私がマシモンに興味津々だったので、マシモンのお寺があるという村に課外授業で行くことになりました。アンティグアからはチキンバスに乗って約1時間。インディヘナとメスティソが住むサン・アントニオ・イツァッパという村にマシモンのお寺があります。この村はマシモンがいるということを除いてはあまり特徴がないところで、とてもひっそりとしていました。でも彼のご加護を求めてグアテマラは元より、中南米各地から信者が来るそう。特に、マシモンの日なるものがあるそうで、その日はものすごい人出になるとか。


マシモンのお寺の近くにはカラフルなロウソクやお祓いに使う草、マシモンの人形などが売ってあります。ロウソクは色によって様々な意味が込められているとかで、例えば赤は恋愛系、黒は仕事系、など。

<カラフルなロウソクが売ってあります>


私の先生曰く、マシモンを信仰しているグループは大きく3つあるとのこと。1つ目は先住民の人たち、2つ目はビジネスを営んでいる人達、そして3つ目のグループはギャングとか暴力団と言われる人達です。何故こういうちぐはぐな信者体系になっているかというと、マシモンは土着信仰の他に、ビジネスの神様という一面も持っているからだそう。

インディヘナの人々にとってのマシモンはジェネラルな感じで、カトリック(イエスやマリア)と同列。彼らはカトリックとマシモンを同時に信仰しています。日本人が神社とお寺に行く感じでしょうか。本当にみんな色んなことをお願いしにくるようです。病気を治してください、とか子どもを授かりますように、とか、振られたので相手の女性を病気にしてください(?!)、とか様々です。

<マシモンのお寺にて。インディヘナの女性たちが呪術師と祈祷に来ていました>


一方、2つ目と3つ目のビジネスをしている人や、ギャングたちのグループについてですが、彼らも熱心な信者のよう。グアテマラのギャング問題はほんとに深刻で、社会問題になっているほど。首都のグアテマラシティを中心に数万人のギャングがいて、グアテマラ社会を暴力で牛耳っています。強請は日常茶飯事、それにちゃんと応えなければ殺されます。


マシモンのお寺に行くと、マシモンへの御礼の記念プレートがたくさん飾ってありました。例えば、アメリカに行かせてくれてありがとう(これが一番多かった)、とかビジネスを成功させてくれてありがとう、とかです。

<ロウソクと壁いっぱいのプレート>

<「7つの家、新しい車(複数)、農園、そして稼がせてくれてありがとう」、と書いてあります。ものすごいお金持ち…>

「刑務所から出してくれて、そして私の家庭のためにありがとう。これからもよろしく」


さて、そんなマシモンのお寺ですが、お寺の前には何組かが呪術師に祈祷してもらっていました。祈祷の値段もしっかり書いてあって内容によって価格も異なるよう(3~14ドルほど)。何やらもくもくと煙が出ていて、私が今まで見たことないような異教徒感というか、オカルト感が漂っています。燃やしているものも、祈祷の内容によって様々。ロウソクの色が違ったり、卵やビスケットが入っていたり。奥の方には数人の呪術師が待機していました。

ちなみに写真は祈祷をしている人の顔を撮るのはNG、効果が半減するそうです。これは呪術師にもよるみたいなので、写真を撮る場合は事前に聞いた方が良いです。結構フレンドリーに対応してくれました。

<インディヘナの女性が呪術師になにかやってもらっているところ>

<火にくべられているのは赤と白のロウソク、卵、ビスケット、などなど>

<こちらは沢山の葉巻を使った祈祷>

<カラフルなロウソクと、火薬のようなものを使った祈祷>


中南米では、キリスト教が土着民族と混ざることはよくあり、キリスト教会も布教のためにある程度それを容認してきた歴史があります(ボリビアの山の神パチャママや、メキシコの褐色の聖母、グアダルーペなど)。

でもグアテマラのマシモンはカトリックでもないのに、スペイン人の顔をした不思議な神様。そして女、酒、タバコが好物で非常に世俗的。ちょっと遡ると先住民の壮絶な、そしてしたたかな抵抗の歴史が見えてきます。

世界はまだまだ広い、私の知らない色んなことがたくさんあるんだなぁとしみじみ思った今回のマシモンのお寺訪問でした。グアテマラのディープなカルチャーにどんどんはまっていきそうです。


<マシモン。お祈りするときに、お酒を口に含んでマシモンにかけるので、ビニールがかけてあります>

<お寺の入り口。色んなものが燃やされているので、煙が立ち込めています>

Atlanta Life ~via Belgium~

2015年~2017年はベルギーで。2017年8月よりアメリカはアトランタで生活を始めました。

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